
業務改善を加速するDX伴走支援
提供:九動株式会社
RYO-FU BASEでは、県内企業に対するDXの取り組みの一環として、DXアクセラレータとして伴走することで、経営課題の整理やその解決への取組の企画立案を支援しており、最終的には、企業自らが自走して DX を進めることができるようになることを目指しています。 今回は、九動株式会社の取り組みについてインタビューしました。
DXに取り組むきっかけ
九動株式会社(本社:佐賀県佐賀市)は、実験動物の供給と関連サービスを通じて、医薬品や食品の安全性評価を支える重要な役割を担っています。医療や食品の分野では、より厳格な基準が求められ、安全性と品質の向上が社会的な課題となっています。そのため、私たちは実験動物の管理や研究支援の高度化を進めるとともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した業務改善に取り組んでいます。
「実験動物の管理をより効率的にし、品質を高めたい」
「データの一元化や業務の見える化を進め、研究者の負担を軽減したい」こうした課題に向き合うため、私たちはDX推進を加速させる決断をしました。しかし、どの業務をどのようにデジタル化すれば効果的か、また新たなシステム導入の適切な方法など、多くの課題がありました。
そこで、私たちは株式会社BottoKのDX伴走支援を受け、社内の業務プロセスを見直し、より効率的かつ高品質な実験動物管理の仕組みを構築することを目指しました。
取り組みの概要
現状把握と課題の洗い出し
DX推進にあたり、まず現状把握から行い、現状の課題を整理しました。以下のステップで課題を抽出しました。
・各部門へのヒアリングを実施し、現状の業務プロセス分析
・業務の中で非効率な点、アナログな作業が多い部分を洗い出し
・DX化における解決が可能な課題をリストアップし、解決の優先順位を設定
優先順位付けの結果、以下のような課題が特定されました。
DXテーマの優先順位付け
1.受注センター業務のDX化(最優先)
・電話受注による業務効率の低下、受注口が複数あり混乱
2.商品在庫管理のデジタル化
・棚卸に時間がかかる、持ち出し記録がないため配達ミスが発生
3.動物実験の進捗管理システムの導入
・実験進捗の可視化が困難、複数部門との連携が煩雑
4.営業の注文~販売までの業務改善
・理論在庫と実地在庫の差異が大きく、機会損失が発生
上記の課題の洗い出しの結果、まず受注センター業務のDX化に着手することを組織で合意しました。
このような課題を解決するために、以下の取り組みを進めています。
・受注業務のデジタル化:電話・FAXでの受注を減らし、Web注文システムを導入。
・在庫情報のリアルタイム共有:在庫管理システムと連携し、問い合わせの手間を削減。
・社内業務の効率化:注文書の自動登録機能を導入し、手作業を削減。
これらでの施策により、受注センターの業務効率化を図り、将来的には完全なオンライン受注への移行を目指しています。
ツール比較時の機能要件の洗い出し
業務効率化と生産性向上を目指し、導入前に以下の機能要件を整理しました。
1.既存システムとの連携可否
現在使用しているシステムとの互換性がないと、データ移行や業務フローの変更が必要となり、現場の負担が増大します。特に、受注管理や在庫管理といった基幹業務との連携は必須でした。
2.操作性の容易さ
ツールの導入は、現場スタッフがストレスなく使えることが重要です。シンプルなUIや直感的な操作性が求められました。
3.コストと運用負担
初期導入費用だけでなく、維持・運用コスト、ライセンス料、保守費用を考慮し、コストパフォーマンスの高いツールを選定しました。
4.セキュリティ対策の充実度
クラウドサービスを活用する上で、情報漏洩やサイバー攻撃に対応できる強固なセキュリティ対策を持つツールを優先しました。
ベンダーアプローチ/最適なツール選定
整理した機能要件をもとに、複数のベンダーと交渉し、比較検討を行いました。その結果、以下3つのソリューションを採用しました。
・業務管理システム:クラウド型プロジェクト管理ツールを導入し、業務進捗を可視化。タスク管理の効率が向上。
・データ管理システム:クラウドストレージを活用し、各部門間のデータ共有をスムーズに。社内の情報管理の手間が削減。
・AI活用支援ツール:データ分析を自動化し、より精度の高い業務改善の意思決定が可能に。
この取り組みにより、業務効率化とデータ活用の最適化が進み、DX推進の基盤が整いました。今後も継続的に改善を進め、さらなる生産性向上を目指します。
今後の展望
DX推進と人材育成による未来戦略
DX推進を経営戦略の中心に据え、業務の自動化を進めるとともに、人材育成に注力する方針です。具体的には、以下の取り組みを計画しています。
・受発注システムの導入:初期から上記(8月末)までに新たな受発注システムを導入し、下期(9月)から試験運用を実施。営業チームにも展開し、来期以降の会社導入を視野に入れる。
・バックオフィスの自動化・外注化:事務作業を極力自動化もしくは外注し、九動の社員がフロント業務に集中できる体制を整備。
・生成AIの活用:報告書の雛形作成を生成AIに任せ、書類作成業務の効率化を推進。
・営業管理システムの導入:営業活動の記録をテキストデータ化し、データに基づいた営業戦略を策定。
・ホスピタリティの強化:受託メンバーが大学に提出する書類を削減し、飼育管理の質を向上。競争優位性を高める施策として位置付ける。
特に、ホスピタリティの向上は今後の成長において重要なポイントです。他の業者の対応が形式的になっている中、丁寧で誠実な対応を行うことで、競合との差別化を図り、新たな顧客層の獲得へとつなげていきます。
また、DXを活用することで、業務の効率化にとどまらず、社員一人ひとりのスキル向上にもつなげていきます。業務の自動化によって生まれた時間を、専門知識の研鑽に充てることで、より質の高いサービス提供を目指します。こうした取り組みが、結果的に顧客満足度の向上と企業の持続的な成長につながると考えています。
(企業概要)
企業名:九動株式会社
住所:〒841-0075 佐賀県鳥栖市立石町惣楽883-1
事業内容:実験動物の販売・検査・試薬開発・関連機器/飼料販売・受託飼育・実験
R6年度アクセラレータ事業受託会社:株式会社BottoK