事例紹介

現場力向上のための 人事DX伴走支援

提供:黒田オートテックジャパン株式会社

RYO-FU BASEでは、県内企業に対するDXの取り組みの一環として、DXアクセラレータとして伴走することで、経営課題の整理やその解決への取組の企画立案を支援しており、最終的には、企業自らが自走して DX を進めることができるようになることを目指しています。 今回は、黒田オートテックジャパン株式会社の取り組みについてインタビューしました。

DXに取り組むきっかけ

黒田オートテックジャパン株式会社(本社:佐賀県神埼市)は、佐賀県内に拠点を置く自動車部品の製造企業です。長年にわたりアナログな業務フローに依存しており、紙による伝票管理や手作業での生産計画が主流でした。
こうした状況を改善するため、2023年より各部署から選ばれたDX推進メンバーがデジタルを活用した業務改善に取り組み始めました。営業利益を10%向上させることを最終目標に掲げ、3カ年計画を立て、帳票・作業報告書・生産管理のDX化を進めていました。しかし、具体的な施策の部分ではまだ漠然としている部分もありました。
BottoK社とは福岡のイベントで出会い、話をする中で伴走支援事業の存在を知り、自社のDX推進を加速させるために応募を決めました。

目的
自社で進めていた作業報告書や生産管理のDXに加え、現場作業員の目標管理やスキル習熟の可視化、管理業務の一部に残るアナログ運用にも課題を感じていました。生産管理のDXは親会社とも連携しながら取り組んでいたため、今回の伴走支援では習熟度評価シートの進捗・結果の可視化を通じた組織の生産性向上を目的に、習熟度評価の見直しを行うことにしました。

取り組みの概要

現状把握・課題整理
DXの取り組みを進めるにあたり、まずは工場見学を実施し、当社の事業への理解を深めていただくと同時に、現場の評価制度に関する課題の洗い出しを行いました。
その中で、人事領域において多能工化を促進する仕組みが十分に機能していないことが課題として浮かび上がりました。例えば、習熟度表は存在するものの、運用が限定的でスキルの可視化が進んでいない状況が見受けられました。
また、習熟度評価に関しては評価基準の曖昧さから、評価者によるバラつきが生じやすいことも課題となっていました。さらに、習熟度が十分に可視化されていないため、適切な人材配置や効果的な教育が困難な状況も確認できました。
こうした課題を踏まえ、習熟度評価制度の再設計と、スキルの可視化を進めるためのツールの検討を進めることにしました。

習熟度評価の再設計
習熟度評価の問題点を洗い出したところ、以下の課題が明確になりました。
・習熟度評価、項目の見直し
・習熟度評価、運用の見直し
・習熟度評価の進捗・評価結果のツール選定
・パート社員向けの等級整備
これらの課題に対応するため、まずは習熟度評価の項目を見直すことから着手しました。既存の評価項目を精査した結果、評価者によって判断基準にばらつきがあり、主観的な評価になりやすい点が課題として浮き彫りになりました。
本来、定量的かつ公平に評価できる基準が望ましいため、各項目の内容を言語化し、具体的な行動や成果が測れるように修正しました。さらに、評価基準を3段階から4〜5段階に細分化することで、社員の成長過程をより明確に可視化できるようにしました。

パート社員向けの等級整備

これまで、当社の製造現場ではパート社員の役割や評価基準が明確に定まっておらず、個々のスキルや経験が適切に評価されにくい状況が続いていました。以前から制度として整えたいと考えていたため、今回の機会にパート社員向けの等級制度構築に着手しました。
具体的には、基本業務の習得段階から、より専門性の高い業務を担当できる段階へと、段階的にスキルアップできるように等級を定義し、各ステップで求められるスキルや行動を具体的に示しました。
この仕組みを導入することで、パート社員は自身のキャリアの方向性を明確にでき、何を目指せばよいのかが分かるようになります。また、当社としても、適切なスキルを持った人材を正社員として登用しやすくなり、パート社員のモチベーション向上とともに、企業全体の生産性向上にもつながることが期待されます。今回の伴走支援を通じて、パート向けの職能要件や職務要件を整備できた点は大きな成果です。

人事評価ツールの検討
5つのツールを候補に選び、各ベンダーとの打ち合わせを実施。料金や機能性、操作性の観点から比較を行いました。ヒトマワリの導入デモを実施し、約2週間にわたりグループ会社の人事も含めて検証を行いました。
親会社でもスキルの可視化プロジェクトが始動しており、その兼ね合いを考慮しながら、自社での活用イメージをより具体的に描けるようになりました。

今後の展望

人材育成とDXの相乗効果
「ものづくり企業ではありますが、やはり人が基盤であり、人をどのように育てていくかが最も重要な課題です。」当社は今後もDX推進を行いながら人材育成を強化し、企業の成長を支えていく方針です。現場の評価制度を整備することで、社員一人ひとりが自分の成長を実感でき、組織全体のモチベーション向上にもつながると考えています。
また、今回の取り組みで整備したパート社員向けの等級制度は、正社員登用の明確な基準として活用し、運用の中でさらに改善を重ねていく予定です。成長機会を増やすことで、長期的なキャリア形成を支援し、働く意欲の向上につなげていきたいと考えています。
評価制度のDX化により、データを活用した客観的な評価を実現し、社員のスキルアップ促進とスキルの可視化と適材適所の配置を進め、生産性向上と競争力強化を目指します。

最後に、どのような企業に伴走支援をおすすめできるかについての見解を桝本様に伺いました。
「DXという言葉は多くの企業が知っていますが、実際に何をすべきかわからないという声をよく聞きます。積極的に取り組んでいる企業もありますが、まだ手探りの段階の企業が多いのが現状です。」
当社もDXを推進する中で、初めは何をすればよいのか全く分からず、試行錯誤を重ねながらここまで進めてきました。DXの導入には勇気が必要ですが、一歩踏み出すことで業務の効率化が進み、気づかなかった改善点が見えてくることも多くあります。
そのため、DX推進に悩む企業には、伴走支援を通じてまずはできることから取り組んでみることをおすすめします。


(企業概要)
企業名:黒田オートテックジャパン株式会社
住所:〒842-0002 佐賀県神埼市神埼町田道ケ里1604-3

事業内容:自動車LAMP用プラスチック部品の製造

R6年度アクセラレータ事業受託会社:株式会社BottoK

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