
夢が集まるラーメン屋の成長拡大 ~攻めと守りのDX~
提供:株式会社夢を語れ
RYO-FU BASEでは、県内企業に対するDXの取り組みの一環として、DXアクセラレータとして伴走することで、経営課題の整理やその解決への取組の企画立案を支援しており、最終的には、企業自らが自走して DX を進めることができるようになることを目指しています。 今回は、株式会社夢を語れの取り組みについてインタビューしました。


DXに取り組んだ背景
まずは、御社の企業概要を教えてください。
佐賀県鳥栖市を拠点に、ラーメン店「夢を語れ」「夢の一歩」、うどん店「笑顔が見たいから」を展開しています。2006年の創業以来、主に二郎系ラーメン店として国内外での店舗展開を進め、アメリカへの出店も果たしました。同社の経営ビジョンは「世界一の夢を集めるプラットフォームになる」。ラーメン屋を通じて夢を持つ人々を支援するとともに、独立を目指す修業生たちの成長をサポートする制度を設けており、30名超の修業生がラーメン屋や他業種での独立を果たしています。
本事業でDXに取り組む以前に、感じていた課題はありましたか?
【1.バックオフィスへの業務負担集中】
フランチャイズの展開を含め会社として成長をしている一方、社内での業務分担や業務指示が不明確な状態であったため、裏方として会社を支えているバックオフィスの担当者(大見)が業務を引き取り、結果として負担が集中していました。また、本来は修業生が経営者として独立するためには自ら行うべき業務が管理されておらず、こちらもバックオフィスに業務が集中していました。このことが、これからの事業拡大のボトルネックとなっていたのです。
【2.非効率なミュニケーション】
弊社は代表の西岡を中心として日々活発なコミュニケーションが、リアル/オンライン問わず繰り広げられています。多い日は1日に200件以上のやり取りが主にLINEで行われていたため、情報が埋もれやすく、タスクの依頼や指示が伝わらない、管理ができておらず業務が進まないという状態でした。
【3.修業生の経営スキル向上】
修業生は最低1年間当社の直営店舗でラーメン作りや店舗運営を学んだ後、3年間「夢を語れ」の看板を借りて店舗を実際に経営します。その後は独立してラーメン店やそれ以外の道へ歩んでいきます。現在も数多くの修業生が在籍していますが、独立後に必要となる経営スキルやSNS活用能力が不足しており、当社もそれを教えるだけのノウハウがない点が課題でした。
経営者としての考え方・店舗運営・マネジメントについては西岡が修業生へきめ細かく教えていますが、顧客獲得、特にSNSを活用した来店誘致にあたっては、マーケティング(顧客)視点を持ったSNSの投稿を行うことの重要性を認識してもらう必要がありました。
DXアクセラレータ事業に参加した理由を教えてください。
DXアクセラレータへの参加を決めた理由には、これらの経営課題を解決し、生産性向上と更なる成長を目指す必要があると強く認識していたためです。社内でもちょうど悩んでいたタイミングであったため、JICUさんのお声掛けいただき即決しました(笑)。
飲食業は営業時間中は忙しくコミュニケーションの時間が限られるため、効率的な情報共有やタスク管理が求められます。これを解決するためのツール導入や業務改善が急務であると考えていました。
加えて「修業生が経営者としてのスキルを身につけ、独立後に成功できるような環境を整えたい」という思いを持っており、DXは経営における「攻め・守り」いずれにおいても役立つものであり、修業生の成功実現に向けた一助にもなると考えました。
課題解決に向けた取り組み
本事業で取り組んだことを教えてください。
【1.業務の棚卸】
当初はDXということで難しいツールを提案されて、それに慣れないといけないというイメージでした。しかし意外にも、担当DXアクセラレータの香月さんに言われたことは「大見さんの業務を棚卸しましょう」でした。現状の業務の状況を書き出し、それを社内で共有し、業務の分担が適正か、DXで改善できる業務は何かを考えましょう、という趣旨でした。
そこで業務の棚卸を行って打ち合わせで共有したのですが、JICUの香月さんがその際「これは業務量が多すぎますね」みたいなことをおっしゃったんですね。それを聞いたメンバーが危機感を高めてくれて、業務分担の適正な見直しや、足りないリソースは採用しようということになり、社内体制の見直しを行う大きなきっかけとなりました。
【2. 業務の役割分担の明確化と採用による補填】
次に、業務自体の回し方、効率化を検討しました。当時の日々の業務は、定例業務と定例外業務とで分けられ、定例外業務は西岡がタスクの指示を全体に対してたくさん発信していました。
この指示には「誰がやるか」「いつまでにやるか」というのが明確ではなく、西岡自身も意識していませんでしたので、バックオフィスがそのタスクを受け取ることで解決し、結果として業務量が増えていきました。また、修業生が行うべき業務も会社として管理されていないため、バックオフィスが代わりに引き受けることが多々ありました。
そこで問題となったのは「コミュニケーション」です。指示する側、指示される側どちらも責任を持ち、やるべき業務をこなす、これには明確なコミュニケーションが必要だと、担当DXアクセラレータの香月さんの助言により気づきました。
【3.業務改善ツール「LINE WORKS」の導入】
これらを踏まえて、ようやくDXツールは何にしようという話となり、LINEWORKSをご提案いただきました。普段のコミュニケーションをLINEで行っており、アナログな西岡さんや修業生がもっとも使いやすいツールであること、そして、夢を語れの現状から、コミュニケーションとタスク管理に対して有効であること、この2点が選定した理由でした。
LINEWORKSにはトークの他にも様々な機能があり、全てを使い切れるかが不安でしたが、担当DXアクセラレータの香月さんと打ち合わせをする中で、当社の課題解決にフォーカスし、「トーク」「タスク」「掲示板」の3つの機能をまずは使ってみることになりました。
一度社内にDXツールを入れたら、全ての機能を使い切る必要があると考えていましたが、(今回の場合は特に無料プランからのスタートでしたので)一部の機能でも確実に社内で導入、浸透させることが重要であることを教えていただきました。
【4. SNSマーケティングセミナーの実施】
売上拡大のためのWebマーケティング・SNS活用セミナーを西岡や修業生に向けて行っていただきました。約2時間、ターゲット顧客の設定、カスタマージャーニー、Instagramの機能説明など、経営者として必要な知識と実際のSNSの活用方法について教えていただきました。
その後も修業生がマーケティング視点を持ち、SNSを活用した集客ができるようサポートしていただきました。
本事業を終了して
本事業に参加し、DXに取り組んだことで、どのような変化がありましたか?
業務の役割分担が明確になり、社員一人ひとりが自分の役割を理解し、主体的に行動するようになり、組織としての成長を感じています。その上でLINEWORKSの導入により、タスク管理が効率化され、情報共有がスムーズになりました。
個人的には、以前は200通/日のLINEが飛び交っていましたその数は半分以下に減り、コミュニケーションが円滑かつ効率的になったことが大きいと感じています。社内のタスクを実施しているか、誰がやるべきか、といったやり取りが大幅に削減できたことが要因です。さらに、通知オフ機能の活用で、LINEではできなかった仕事とプライベートの区別もつけやすくなりました。LINEと違って誰が既読なのかが分かるため、伝えたい相手に伝わっていることが分かることもとても大切な情報となっています。
そして何よりも、社長の西岡が積極的にタスク管理に活用し、またトークでは外部の人を招待するなど社内外でのコミュニケーションツールとして活用していることもあり、全社で活用が進んでいます。
また、SNS活用セミナーを通じて修業生が経営者として必要なマーケティングの視点を持つきっかけとなりました。LINEWORKSは修業生にも活用してもらっていて、タスク管理やコミュニケーションの重要性を理解してもらいましたが、こちらも将来経営者となる上で良い経験となっているようです。
事業終了後、自社でどのようにDXに取り組んでいきたいと考えていますか?
これから会社として成長していく中で、やはり屋台骨となるバックオフィスの存在は欠かせません。今回の事業を通して会社全体の状況を俯瞰することができましたので、社員全体の視野を広げ全体でサポートし合う体制を構築し、より強固な組織としても成長していきます。
攻めの方では、今回学んだことを活かして、SNS活用を含む全体的なブランディング戦略をブラッシュアップしていきながら、より多くの夢を集められるように取り組みます。
修業生も今後増えていく中で、今の修業生が学んだことはこれから入る修業生にも引き継いでいき、競争が激しい飲食業界で勝ち残れる卒業生を増やしていきたいです。
担当アクセラレータからのコメント
株式会社夢を語れさんはとにかく活気があり、メンバー全員が主体的に考え取り組む組織です。本事業のポイントは、長期ビジョンから経営課題を抽出し、業務を棚卸しつつ優先順位として高いものをDXで改善するように取り組みました。今後の成長に向けた基盤づくりができたのではないかと考えています。
(企業概要)
企業名:株式会社夢を語れ
住所:〒 841-0055 佐賀県鳥栖市養父町65-1
事業内容:ラーメン・うどん店及びFC経営
R6年度アクセラレータ事業受託会社:株式会社JICU