事例紹介

「なんとかしたい」をかたちに。〜データ活用での変革!~

提供:いきや食品株式会社 

佐賀県唐津市にある食肉加工製造業のいきや食品株式会社。かつては在庫管理も製造計画を漠然とまわしていた現場に、変革が。 Uターンされた濵本さんのリードのもと、データ活用や勤怠管理ツールの導入、DXアクセラレータ事業への参加を経て、業務の“見える化”を着実に推進。製造数の予測、従業員の働き方改善、新工場建設を見据えた経営体制の見直しまで——中小企業の“等身大DX”の現場を追います。

1.課題と出発点 

SISC/岩田 

アクセラレータ事業で伴走支援を受けられたり、DX認定を取得されたりと、DXの取り組みを進められている印象です。
取り組みを始める前はどういう状況だったのでしょうか?

濵本さん

もともと、パソコンやメールなどのITリテラシーがない人ばかりでした。
在庫管理もしておらず、製造数や、どのくらい製造するかの予定もなく動いてるような状況でした。
注文がきたらたくさん作る、来なければ作らないといった感じで、いつもバタバタしていました。 
私が3年ほど前に佐賀に戻ってきて手伝い始めても、その状況は変わらず、「なんとかしたいね」とは話していました。

井手さん

閑散期は「みんな休んで!」という感じで製造をかなり減らしていて、
突然忙しくなると、「どうする、こんなに作れる?」と慌てることもありました。

SISC/岩田

そんなときに濵本さんが戻ってこられて、「なんとかしよう」となったんですね。

井手さん

はい。計画的に物事を進めていこう、ということになりました

濵本さん

私はもともとあった課題の声を形にしただけですが...(笑)

井手さん

「どうしよう、どうしよう」、と思っていましたが、データがないので、どのくらい製造すればよいのかも分からず、漠然と「なんとかしないと」と考えていました。
でも、何をどうすればいいのかわからない状況でした。 
そんな中で濱本が戻ってきて、「こういうのを数えたほうがいい」などとリードしてくれました。

SISC/岩田

濱本さんは、データ分析などの経験をお持ちだったのですか?

濵本さん

食品や製造の経験はありませんでしたが、前職は通信業界で販売営業や営業企画をしていました。
新しい商品が出ると販売戦略を立てたり、数値管理をしていました。
iPhoneがハンバーグになった感じです(笑)
妹(社長)が困っていたので、戻ってきました。兄らしいことができていなかったので...

SISC/岩田

素敵なご兄妹ですね!
戻ってきた時に、文化の違いに衝撃はありましたか?

濵本さん

全部が衝撃でした(笑)
前職はITばかりだったので、それに比べて「紙と鉛筆、計算機、セロハンテープ」とか...
はがきが机の上にポンっておいてあったりもして。 
「ちょっと一回、みんなちゃんとしよう」と思いましたね。 

2.アクセラレータ事業での支援と変化 

SISC/岩田

DXアクセラレータ事業での伴走支援も受けられましたよね。
きっかけは何でしたか? 

濵本さん

点在していたものを線でつなぎ、会社の全体最適化を唐津DXイノベーションセンターに相談していた中で、「こういった支援事業がありますよ」と紹介されたのがきっかけです。 

SISC/岩田

DXアクセラレーターでの具体的な取り組みはこちらをご覧ください。

支援事業を受けられる際、どのようなお気持ちでしたか?

井手さん

ただただ、本当に会社がよくなってほしいという思いでした。

濵本さん

私は正直、最初はDXの意味もよくわかっていませんでした。
「物流がよくなるのかな?」くらいのイメージで、トランスフォーメーションって何?という感じでした。 

SISC/岩田

具体的に、どんな業務がデジタル化されましたか?

井手さん

顧客管理、原材料の仕入れ、製造・出荷などをシステムで管理するようになりました。
それまでは紙での管理でした。

SISC/岩田

冒頭おっしゃっていた在庫管理は、うまくいくようになりましたか?

井手さん

はい。まだ発展途上ですが、改善されています。
従業員の働き方にも変化が出てきました。
以前は「そんなに人はいらない」「機械を入れたから人数は必要ない」などと感覚的な管理をしていましたが、今ではその日に必要な人数を考えてシフトを組めるようになりました。  
また、この取り組みが始まる前に勤怠ツールを導入はしていたのですが、使えておらず....
タイムカードを使っていて、総務・経理の人がタイムカードをおしてない従業員に、いちいち聞きに行って、手書きで出退勤時間を記入して、最後にExcelに入れて、最後に目検をしてということをしてました。
その結果、残業時間が多くなるということもありました。

SISC/岩田

なるほど。結構勤怠の確認にも手間がかかっていたのですね。
勤怠ツールを使い始めてからの変化はどうですか?

濵本さん

最初はタイムカードのほうがやっぱり慣れているので、そっちのほうがいいと思ってる従業員もいたと思います。 

井手さん

総務もずっとやり方を変えてなかったんですよね。
それゆえに残業が多いということもあったと思います。
最近はだいぶ残業もなく、早く帰るようになりましたよ(笑) 

濵本さん 

うちは働くママさんが多いというのも特徴の一つです。 
勤怠ツールから勤怠実績を集めて、「30人出勤の枠としてあるけど、実際稼働しているのは28人で、だいたい一日2人くらいは休んでいるよね」とかデータを拾うことができています。 
「だったらこれでは製造にあたって稼働が足らないよね」という話もできるようになりました。

SISC/岩田

そういったデータ分析は井手さんがメインでやられているんですよね。
最初、データ分析に対して戸惑いはなかったですか?
私自身が数字が苦手なので、「うっ」となることもありまして....

井手さん

ありましたよ!
何をどうしたらこの数字が出るのかわからなかったですし、何をしたらいいのか全くわかりませんでした。 

SISC/岩田

濵本さんは「こういう数字が欲しい」や、「こういうデータが欲しい」などを伝えていらっしゃいましたか?

濵本さん

最初、伝えてはみましたが、伝わらないこともありましたね...
「何がしたいの」とか言われたり(笑)
私たちはいとこの関係ということもあって、なんでもお互い言っちゃってましたね。
「なんでわからんと!」とか「なんででもよ!」とか。

井手さん

毎月何個製造したかの個数データを入力して、次は受注と出荷の個数を入力するようにしました。このデータをとりためていったら年間で製造が必要な個数がわかってきました。
そして月ごとに製造が必要な個数がわかり、受注が決まっているものもあるから今年はその1.5倍の製造が必要かなとか段々わかってきました!

SISC/岩田

初めてやることって、コミュニケーションが大事だなと思います。

データ分析は濵本さんと井手さんが会話をしながら、「このデータを取って、こうしていこう」と決まっていったのでしょうか?

濵本さん

そうですね。
今では私が何も言わなくても、「120%で製造必要数出してるよ」などと言ってくれるようになりました!

3.DX認定取得と今後の展望

SISC/岩田

いきや食品さん、すごくオフィスがきれいで素敵です!
従業員さんの働くモチベーションも上がるのではないでしょうか?

濵本さん 

2020年頃から、新工場を建てようと話をしてたみたいですが、実現できていませんでした。
2024年に、「もう一度しっかり考えよう」となり、新しくするなら、ほかの事もきちんとしようということで動きだしました。
その後半の取り組みとしてDX認定取得も行いました。 

SISC/岩田

3月に取得されたとのことですが、(取材時は4月中旬)効果は感じられていますか?

濵本さん

まだ目に見えた効果は感じられていませんが、ホームページなどを通じて、「いきや食品はデジタル化に取り組んでいる」、「情報の管理をしっかりしている」と思ってもらえるようになりました。
そういった部分で、企業のブランドイメージがよくなっていると感じます。

SISC/岩田

DX認定を取得してよかったと思われますか?

SISC/岩田

はい。DX認定は、取り組みを「ちゃんとする」きっかけになると思います。 

井手さん

どんぶり勘定からの脱却もできましたね。DXに取り組む中で、「どう伝えたらわかるか」という視点も持つようになりました。 

濵本さん

うちがやったことは、結果的にDXだったかもしれませんが、そもそもは事業計画を立てるために数字を出したり、企業理念を考えたり、基本的なことばかりでした。
「DX」という言葉は、田舎の企業にとっては敷居が高く感じられます。だからこそ、うちの事例をきっかけに、事業計画を見直したり、データに基づいて判断する企業が増えると嬉しいです。 

SISC/岩田

いきや食品さんのDXの取り組みについては、HPにも掲載さています。

最後に、今後の展望について教えてください。

井手さん

これからもデータを活用して、効率的な制度や体制を構築していきたいです。

濵本さん

社長(妹)は「みんなが笑顔で幸せに暮らせるようにしたい」と思っています。
私は、その手伝いができればと思っています。 

SISC/岩田

素敵ですね。経営層がそう思っていると、従業員も元気になりますし、「じゃあ頑張ろう」と思えるのではないでしょうか。
今日は素敵なお話をたくさん伺うことができました。ありがとうございました!

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