事例紹介

「挑戦し続ける」中野建設 ~デジタルツールの取捨選択~

提供:株式会社中野建設

大正7年創業、100年以上の歴史を持ち、常に革新的姿勢で会社を発展させ続けてきた中野建設が取り組むDXは、多くのチャレンジと取捨選択の積み重ねでした。

まずはチャレンジしてみる

中島/SISC

まず、どんな取り組みを行われているのか教えていただけますか?

堤さん/土木事業部

現在、中野建設の土木事業部では4つの取り組みを行っています。

1.       ワンマン測量機械「杭ナビ」と工事写真整理・共有用の電子黒板導入

2.       測量・設計・施工・検査・維持管理などすべてのプロセスにICT(情報通信技術)を導入し、建設現場の生産性向上を目指す取り組み「i-コンストラクション」

3.       WEBカメラやネットワークカメラを活用した遠隔臨場

4.       画像解析技術・AIを活用した煩雑な鉄筋検測やコンクリート構造物の変状計測

また、これからトライしようと計画しているものとして、VR(仮想現実)での安全訓練や施工シミュレーション、AR(拡張現実)/MR(複合現実)での3次元モデル利用や施工機械の自律化による無人化・24時間施工などがあります。

測量を簡単に

VR

野口紗季さん/管理本部

事務部門での効率化も行っています。管理本部でRPAを導入し、請求書入力業務の9割を自動化しました。

中島/SISC

非常に攻めていますね! なぜそのように様々な取り組みを行うのですか?

堤さん/土木事業部

まず大前提として、当たりはずれがあると考えています。必ずしも初期投資で回収できるものではないので、ある程度は先行投資と考えて、いろいろなことにチャレンジしながら合うものを導入していくようにしています。

中島/SISC

たとえ「はずれ」だったとしても、「合わないことが分かった」ということが成果になるわけですね。

そういったチャレンジができる環境づくりをされたのもポイントだと思います。

建設業というと職人さんが多いような業界イメージがありますが、社内でのコミュニケーションや部署間での情報共有はどのようにされていますか?

中原さん/情報管理室室長

今年から情報管理室が本格的に動き出しました。今までは各部が各部署なりに単独で実施していましたが、情報管理室が部署間のパイプ役を担い、少しずつ横のつながりをつくっていくようになります。

中島/SISC

DXあるあるとして「部署間での対立が起きがち」という話もあったりしますが、やはり対話が大事ですよね。

導入システムを選ぶ基準は現場の社員

中島/SISC

何事も始めるための意思決定には理由が必要です。たくさんの取り組みをされている中野建設さんですが、そのきっかけはなんだったのでしょうか?

堤さん/土木事業部

もともとICTの取り組みを始めたのは品質確保の法律ができた平成2728年ごろです。社員の希望というのはなかなか上がってこないですし、担当者は通常業務をしながら兼務で、なかなかうまくいきませんでした。

そこから「まずはチャレンジしてみよう」と、とにかく現場スタッフにツールを触らせてみるようになりました。最初は面倒くさいと思われますが、やっているうちに現場に「これは便利だ」という認識が生まれてきます。そうするとしめたもので、だんだん受け入れられていく。杭ナビや「i-コンストラクション」などは、現場で実際にやってみて「いい感じ」「これは便利だ」という反応があったので継続しています。もちろん、すべてがそういい反応をもらえるわけではないので、たくさん「種まき」をすることが重要です。

中島/SISC

当センターの令和3年度DX補助金を活用して、杭ナビの導入をされましたね。これもひとつの「種まき」だったかと思いますが、実際に杭ナビを導入して現場の声はいかがでしたか?

野口さん/土木事業部

私はもともと現場の人間ですが、現場からの声が一番大きいのがこの杭ナビですね。従来の測量作業は人が23人必要でしたが、杭ナビを使えば1人で空いた時間にできます。日々の業務時間が減って、残業の削減にもつながっています。

堤さん/土木事業部

管理者は現場が終わってから報告書作成などの事務作業が大変ですが、そういう作業時間が確保できるのは大事なことですね。DX補助金で杭ナビを1台導入しましたが、現在は7台にまで増えています。

中島/SISC

「種まき」によって現場のみなさんに便利さを知ってもらうところから始める、というわけですね。システムを選ぶ際に、トップダウンで決めて現場に一気に導入するのではなく、あえて現場の方々を基準としたのはなぜですか?

中原さん/情報管理室室長

働き方改革が大きな要因ですね。今の時代、若い子たちは簡単に辞めていきます。従業員には寄り添わないといけません。

中島/SISC

デジタル化やDXというと「人件費を削減する=自分の仕事が奪われる」というイメージを持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、現場の声としてはどうでしたか?

堤さん/土木事業部

たしかに年代別で言うと40~50代の方はそういったイメージを持たれる方もいらっしゃいます。若い世代は結構ゲーム感覚で気軽に取り組んでくれますね。人手不足が大きな課題としてある以上はやらないといけないことですから。

RPAで効率化を図り、新たなる課題へ

中島/SISC

DXのお話を聞きに取材へ行くとほぼかならずと言っていいほど人材不足の話になります。人材不足という課題に対して、中野建設さんはどう対処していかれますか?

野口紗季さん/管理本部

RPAは人手不足を解決する手段のひとつだと思っています。現在は管理部門でRPAを導入しており、コロナ禍のテレワークもRPAがあったからこそできました。1年間の実績として1400時間の作業時間削減に成功しています。

ただ、空いた時間をどう活用するかとか、原価管理部や設計部などの事務系ではない内勤のスタッフがいる部署は変わっていないこととか、今は開発のスキルが1人に偏っていて、フォロー体制も考える必要があるなど、課題はたくさんあります。

中原さん/情報管理室室長

RPAにも人員削減や、業務が脅かされるようなイメージがあるようです。定型業務はロボットに任せて「もっと思考を働かせ、付加価値を生み出すような部分をやろう」と推奨しましたがなかなかそのイメージはぬぐえず、難しさを感じていました。

中島/SISC

地域の企業は特に、ぶち当たる壁だと思います。

会社には経営方針や目標があるはずですが、一方で経営課題もあるでしょう。壁を前にしたときにはかならず人が重要になりますが、その推進役、けん引役を皆さんが担っているような気がします。今後の中野建設がこうなってほしいという理想などはありますか?

野口紗季さん/管理本部

業務のやり方自体が変わるといいなと思います。

今は紙の請求書を扱っていますが、ゆくゆくは電子請求書にしていきたいですし、もっと人間にしかできないことをやっていきたいですね。単純な入力作業はどんどんなくして、人と話すとかコミュニケーションをとること、考えることをしていくのが理想です。

中島/SISC

さらなる挑戦をし続ける中野建設の今後が楽しみですね!

DXの基礎基盤となる社員研修

中島/SISC

業務効率化によって空いた時間をどう活用するかという話がありましたが、最近よく聞く「スキルアップ」「リスキリング」といった言葉がキーワードになるかもしれませんね。

野口さん/土木事業部

土木事業部のICT推進室では社員研修ICT塾を企画しています。

これからもっといろんなICTの現場に対応できるよう、3Dモデル・図面の作成について若手を中心に教えていく予定です。

堤さん/土木事業部

今、若い世代と上の世代のちょうど間、30代くらいの人材が不足している状況です。これから50代以上が退職していく先々のことを考えると、今のタイミングで次世代につなげておかないと大変です。上の世代と下の世代をパートナーとして、メンター的に育てていくシステムを検討しています。人の相性は合う合わないがありますから難しい部分も多いと思いますが、良い経験を積ませられたらと考えています。

中島/SISC

人材育成の面でも挑戦を重ねていくということですね。DXを進めていくうえで人材育成はとても重要です。センターでお手伝いできることがあれば何でもおっしゃってくださいね!中野建設さんの挑戦を応援しています!

事例紹介一覧へ戻る