事例紹介

デジタル活用による働きやすい職場環境の実現と利用者満足度向上への挑戦

提供:社会福祉法人 椎原寿恵会

RYO-FU BASEでは、県内企業に対するDXの取り組みの一環として、DXアクセラレータとして伴走することで、経営課題の整理やその解決への取組の企画立案を支援しており、最終的には、企業自らが自走して DX を進めることができるようになることを目指しています。 今回は、社会福祉法人 椎原寿恵会の取り組みについてご紹介します。

デジタル技術の活用を通じて業務の効率化と職員の働きやすい環境づくりを進めるとともに、入居者やその家族の満足度を可視化し、サービス品質の向上を図りました。
既存のICT機器の見直しやスキル把握、アンケートやSNSの活用を通じて組織全体の意識改革を進め、地域から信頼され選ばれ続ける福祉施設の実現を目指しています。

 多角的な福祉事業を支える組織基盤とDXへの着目 

佐賀県鳥栖市を拠点に、高齢者福祉、障がい者支援、保育分野など幅広い福祉サービスを展開している社会福祉法人 椎原寿恵会は、佐賀県内のみならず鹿児島県にも複数の事業所を展開し、特別養護老人ホーム、グループホーム、ケアハウス、デイサービス、居宅介護支援センター、地域包括支援センター、保育園など多様な拠点を運営しています。地域住民の生活を多面的に支える存在として長年活動を続けてきた同法人にとって、利用者一人ひとりに寄り添ったサービス提供と同時に、職員が安心して働き続けられる環境づくりは重要な経営課題でした。

福祉業界全体が業務の効率化や省人化が求められている中、業務負担の軽減や職員の定着率向上を図る手段として、デジタル技術の活用は避けて通れないテーマです。しかし、ICT機器やシステムは個別に導入されているものの、組織全体としての活用方針や優先順位が明確ではなく、取り組みが点在している状態でした。そのため、より体系的かつ継続的なDX推進の必要性を強く感じていました。

 既存ICT環境と現場に残るアナログ業務の課題 

事業参加以前から、特別養護老人ホームを中心にWi-Fi環境の整備、見守りカメラやベッドセンサーの導入、介護記録ソフトへのデータ集約、睡眠状態を可視化する見守りツールの活用など、個別のICT施策は積極的に進めていました。夜間帯の見守り負担軽減や安全管理の強化といった面では一定の成果を感じていましたが、一方で紙による記録や書類管理が依然として残っており、同一内容を複数媒体へ転記する二重入力が発生していました。

業務時間の圧迫だけでなく、入力ミスや確認作業の増加など、非効率な業務構造による課題に加え、勤怠、給与、会計などの基幹システムが連携されていないことによる中間作業の増加、拠点ごとに異なる運用方法、事務処理の属人化など、組織全体の最適化を妨げる要因も存在していました。外国籍職員の増加に伴い、専門用語や操作方法の理解に時間を要する場面も見られ、機器導入が必ずしも業務軽減につながっていないという実感もありました。課題は現場レベルで共有されていましたが、全体像として整理されておらず、優先順位をつけた改善が難しい状況でした。

 業務と課題の可視化がもたらした意識と体制の変化 

本事業を通じて最も大きな成果として挙げられたのが、業務および課題の「可視化」です。専門家による伴走支援のもと、業務フローや情報の流れを図式化し、関係者全員で共有する取り組みを進めています。これまで経験や感覚に頼っていた業務理解が、具体的な資料として可視化されることで、組織全体の共通認識が形成されました。抽象的であった「効率化したい」「ペーパーレスを進めたい」という意識を整理し、取り組む優先順位をつけ、行動計画へ落とし込みました。

まず、法人全体のICT管理担当者を中心に、既存のICT委員会および施設内のDX推進委員会が連携し、管理職だけでなく現場職員も交えた協議を重ねました。現場の視点を取り入れることで、実務に即した現実的な改善策を検討できる体制が整い、定期的な打合せが実施されることで、取り組みが停滞することなく継続できています。

 スキルマップ作成による人材把握と教育体制の基盤づくり 

取り組みの中で象徴的であったのが、職員のデジタルスキルマップの作成です。職員一人ひとりの理解度や得意分野を把握する過程で、現場から多くの意見やアイデアが引き出されています。当初想定していた課題に加え、管理職層でも福祉機器の操作に不安を抱えているケースが明らかになるなど、新たな気づきが得られました。

スキルの可視化は、今後の研修計画や教育体制づくりの基礎資料として活用され、拠点間のばらつきを抑えるための指針としても機能しています。誰がどの分野に強みを持っているのかが明確になることで、職員同士の相談やサポートが自然に生まれ、組織内の協力体制が強化されます。デジタルに対する心理的なハードルが下がり、学び合う風土が醸成されました。

 家族アンケートとSNS発信が生んだ外部評価の可視化 

入居者家族への満足度アンケートのデジタル化も大きな成果が出ています。従来は紙で実施していたアンケートをオンラインフォームとQRコードに切り替え、紙との併用で運用を開始しています。結果として、多くの家族がデジタル回答に対応できることが分かり、集計作業の効率化と同時に、家族の声を迅速に職員へ共有できる体制が整いました。これまで懸念されていた否定的意見だけでなく、前向きな評価も数多く寄せられ、職員の意欲向上につながっています。

満足度の可視化は、サービス品質の向上に向けた重要な指標です。また、Instagramを活用した情報発信にも注力しており、日常の様子や取り組み内容を継続的に発信することで、地域社会との接点拡大や施設の透明性向上に寄与しています。フォロワー数の増加は、法人への関心の高まりを示す象徴的な成果でした。

 システム統合と人材育成が描く持続的な未来像 

業務基盤の整備としては、経理・労務・人事などの管理システム統合を検討しています。中間作業や二重入力を削減することで業務時間の短縮を図り、その時間を利用者支援へ還元することを目指しています。紙書類の洗い出しによって電子化の優先順位が明確になり、段階的な改善の道筋が見えてきました。今後は、計画的なデジタル研修の実施、外国籍職員にも理解しやすいマニュアル整備、AI活用の可能性検討などを進めていく方針です。デジタルに明るい人材を育成し、属人化しない体制を構築することで、持続的なDX推進を実現しようとしています。

最終的に目指しているのは、DXを通じて利用者満足度を高め、地域から選ばれ続ける施設であることです。デジタル技術を特別なものではなく日常業務に自然に溶け込ませることで、これからの福祉の在り方を着実に形にしようとしています。


(企業概要)
企業名 :社会福祉法人 椎原寿恵会
住 所 :〒 841-0072 佐賀県鳥栖市村田町1250番地1
従業員数:387名
事業内容:介護福祉事業

R7年度アクセラレータ事業受託会社:株式会社フォーバル九州・中四国カンパニー

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