事例紹介

小さな改善の積み重ねが生んだDXの定着と働き方改革への挑戦

提供:社会福祉法人 東方会

RYO-FU BASEでは、県内企業に対するDXの取り組みの一環として、DXアクセラレータとして伴走することで、経営課題の整理やその解決への取組の企画立案を支援しており、最終的には、企業自らが自走して DX を進めることができるようになることを目指しています。 今回は、社会福祉法人 東方会の取り組みについてご紹介します。

DX推進委員会を中心に紙業務の電子化や見守りセンサー導入を進め、業務効率化と職員負担軽減を実現しました。
柔軟な働き方とサービス品質向上を両立し、持続可能な福祉運営を目指しています。

 長い歴史を礎に、次の時代を見据えた総合福祉法人の挑戦 

社会福祉法人東方会は、障害福祉サービスを中心に、保育事業、就労支援事業など多岐にわたる福祉サービスを展開している総合福祉法人です。障害福祉分野は平成7年より、保育事業においては昭和26年より運営を続けており、地域社会と長年にわたり密接に関わりながら事業を拡大しています。多様な年代や背景を持つ利用者を支える東方会にとって、安定したサービス提供体制の維持と、職員が安心して働き続けられる環境整備は重要な経営課題でした

DXへの関心が高まったきっかけは、「DXとは具体的にどのようなものなのかを理解したい」という素朴な問題意識でした。DX認定という制度の存在は以前から耳にしていたものの、その詳細までは把握しておらず、県内の社会福祉法人で取得事例がほとんどないことを知ったことが、挑戦への後押しとなりました。すでにデジタル化や業務改善の取り組みは進めていましたが、それらを体系的に整理し、法人としての方針や姿勢を明確に示すことが必要であると感じていました。また、認定取得を通じて職員のモチベーション向上につなげたいという思いも強くありました

 コロナ禍を契機に進んだデジタル基盤整備と活用の広がり 

事業参加以前から、東方会では段階的にデジタルツールの導入を進めていました。Google for Nonprofitsを知ったことを契機に、メールやカレンダーだけでなく、Google ChatやGoogle Meetなどのコミュニケーションツールを本格的に活用し始めました。コロナ禍により対面での打ち合わせや会議が制限される中、オンライン環境の整備は急務となっており、結果として職員間の連絡や情報共有のスピードは大きく向上しています。

現場との連携にはLINE WORKSを活用し、迅速な連絡体制を構築していました。さらに、会議の議事録作成にはNotebookLMを活用し、Geminiなどの生成AIツールも業務効率化の一環として取り入れています。こうした取り組みは単発ではなく、段階的活用範囲を広げていた点が特徴でした。一方で、職員ごとの習熟度には差があり、活用が進んでいる部署とそうでない部署との間に温度差が生まれていたことも事実でした。

 DX推進委員会が生み出した現場主体の組織変革 

2024年よりDX推進委員会を立ち上げ、若手職員を中心とした8名体制で取り組みを進めています。委員会の最大のテーマは紙業務の削減で、LINE WORKSと連携可能な電子決裁ツールを導入することで、これまで印刷して保管していた書類の電子化を進めています。有給申請や起案書の回覧業務も電子化され、承認漏れや紛失といったリスクが軽減されました

まずは1施設で試験的に運用を開始し、成果が確認できた段階で他施設へ横展開を進めています。委員会では定期的に発表会を開催し、「この紙は本当に必要なのか」「別の方法はないのか」という視点で業務を見直しています。その結果、現場からの改善提案が吸い上げやすくなり、職員が主体的に関わる風土組織が形成され、DXを上から押し付けるのではなく、現場が自ら考えて納得したうえで進める姿勢が定着しています

 人材の確保と、定着に向けた意識改革 

東方会が抱えていた最大の課題は人材の確保・育成です。特に夜勤対応が可能な職員の確保は難しく、業務負担の偏りが生じていました。業務効率化を目的に多くのデジタルツールを導入していましたが、入力作業に対する苦手意識や心理的抵抗があり、十分な活用につながらない場面も見られました。検温入力や医療用リフトの導入時にも同様の課題があります

こうした経験から、現在は「やらせる」のではなく、「自分たちで考えて取り組む」方針へと転換しています。DX推進委員会を通じて現場の声を吸い上げ、改善策をブラッシュアップしながら進めることで、職員の主体性が高まりつつあります。外部からの評価や好意的な反応が職員の意識変化を後押しし、DXが特別なものではなく日常の延長線上にある取り組みとして認識されました

 見守りセンサー導入による具体的な成果と身体的負担の軽減 

事業期間中の大きな成果として挙げられていたのが、見守りセンサーおよびおむつセンサーの導入です。夜間巡回の頻度を減らし、必要なタイミングでの対応が可能となったことで、利用者の睡眠を妨げる回数が減少しています。万歩計による計測では、夜勤時の歩数が従来の1万7千歩〜2万歩程度から、約3分の2まで減少しており、身体的負担の軽減が数値として確認されました

現在はセンサー設定が一律であるものの、今後は利用者ごとの状態に合わせた個別設定を進める構想です。さらに、カメラや徘徊センサーとの連携も検討しており、より安全性と効率性を高めた運用を目指しています。デジタル機器の導入が設備投資で終わるのではなく、実際の業務改善につながりました

 柔軟な働き方と持続可能な組織づくりへの未来像 

今後の構想として掲げているのは、業務効率化によって生まれた余力を働き方改革とサービス品質向上へとつなげることです。夜勤体制を3名から2名へ見直し、業務量を約2割削減する構想です。勤務体系を8時から20時、20時から翌8時の2交代制へ整理し、週4日勤務・週休3日制といった柔軟な制度の導入も視野に入れています

さらに取組では、単なる業務効率化にとどまらず、「攻めのDX」としての側面もあります。職員の働きやすさや満足度を高めることで、結果として利用者へのサービス品質が向上し、入居者やその家族の満足度向上へとつなげていく好循環を生み出そうとしていました。現場の余力が生まれることで、より丁寧なケアやコミュニケーションが可能となり、その評価が評判として広がることで、入居希望者の増加にもつながることを見据えています。今後も働きやすさの向上を起点に、サービス価値と経営の双方を高めていく戦略です

伴走支援を通じて得られた最大の成果は、東方会だけでは気づけなかった多角的な視点です。業務マニュアルの見直しや採用におけるペルソナ設計など、デジタル分野にとどまらない学びが得られており、DXは難しいものではなく、楽しみながら取り組むものであるという意識が広がりました。東方会では、小さな改善の積み重ねこそが組織を前進させ、地域から信頼され続ける原動力になると実感しています。今後も一つひとつの取り組みを丁寧に積み重ねることで、持続可能な法人運営の基盤を築いていく方針です


(企業概要)
企業名 :社会福祉法人 東方会
住 所 :〒848-0035 佐賀県伊万里市二里町大里乙3602-1
従業員数:184名
事業内容:介護福祉施設の運営

R7年度アクセラレータ事業受託会社:株式会社フォーバル九州・中四国カンパニー

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