事例紹介

「知る」ことから始まった DXによる社内環境の改善

提供:株式会社ヨシムラ

干物をはじめとする水産加工品を製造し、全国のスーパーはもちろん海外にも販路を広げている「ヨシムラ」。味を追求しつつ業務効率化・DXを進める中でアクセラレータ事業に参加しました。参加をきっかけに変わったのは、スタッフの業務に対する姿勢でした。

総務部 部長 林様 

「DXってよくわからない……」から身近な課題の解決に動けるように

――本事業に参加した経緯を教えてください。

当社は以前から基幹システムでの受発注や在庫管理などを行っており、業務のデジタル化・効率化を進めていました。さらにDXを進めていこうという機運が社内で高まったのですが、改めて「DXとは」を考えると「私たちもすでにデジタルツールは使っているし、これ以上何をするの?」と、抽象的でよくわからないな、という感覚に陥ってしまいました。でも調べてみると、どうやらまだまだできることはありそうとうことがわかってきたのです。
自社で手探りで進めようとしていたのですが、行き詰まりを感じはじめたころ、佐賀県スマート化センターからアクセラレータ事業をご紹介いただいたんです。良いタイミングだと思って応募しました。といっても、相談内容は「どうしたらいいですか」と、かなり漠然としていましたので、スマート化センターの方も困られたかもしれませんね。

――本事業で取り組まれてきた内容を教えてください。

大きくは3つあります。1つ目は、帳票のデジタル化です。特に衛生管理の手法として義務付けられているHACCP(ハサップ)に関連して、温度や水質を管理するために作成しなければならない書類や管理表が多数あります。毎月使うもの、年に1回~数回使うものを含めて、全部で130ほどの帳票があることが分かりました。現在はそのすべてを紙で管理しており、現場では手書きで記入して持ち回っています。管理自体が煩雑になっているのと同時に、書類の保管も課題となっていました。当初はGoogleフォームとGoogleスプレッドシートを活用した管理を試行しましたが、HACCPの要件に適していない部分があることが分かってきました。今後は、kintone等のノーコード・ローコードツールを活用した管理に向けて、検討を進めていきます。
2つ目は、バックオフィス業務の改善です。現在は注文書をファックスで受付け、その情報を基幹システムに入力しています。発注から仕入れ、システムへの入力、販売、請求に至る工程のすべてが紙をベースになっており、以前から課題を感じていました。非効率な業務フローを改善すべく取り組んだのが、フローチャートの作成です。それをアクセラレータ事業者にチェックしてもらって、改善点をアドバイスしていただいています。

DX研修・課題整理ワークショップの様子


最後は、社内の意識改革。以前は加工現場の社員に改善すべき業務がないか尋ねても、改善すべきことに気付けずなかなか意見が出てきませんでした。そこでアクセラレータ事業者にDX研修・課題整理ワークショップを開催していただきました。現在は、ワークショップ内で抽出した課題や改善のレポートをみんなが通る通路の壁に貼って、改善の進捗が見えるようにしています。社長もチェックしていて、ときどき激励や喝が飛んできますね。以前は特定の社員だけが動いていたのに、いまは全社で取り組む方向に、確実に動き始めました。
これらのほかにも、会計に新しいクラウドサービスを試してみたり、ノーコードツールに挑戦して見みたり……。どんなことができるのか、いろいろと試してみている段階です。

ワークショップで抽出した課題と改善レポート

「こんなこともできるんだ」を知ることで、さらなる業務改善が見つかる社内風土に

――本事業で良かった点はどんなところでしょうか。

今は世の中にデジタルツールがあふれていて、どのツールをどう選べばいいのか、候補を選ぶだけでも困っていたんです。そこをアクセラレータ事業者が当社に合いそうなツールを提案してくれたので、とても助かりました。そして、ただツールを導入するだけでなく、業務の課題を抽出して、その解決のためツールを選ぶという手順がとても重要だということも教えていただきました。いきなり大きな失敗をして挫折してしまわないように、小さなトライアンドエラーを繰り返して、少しずつ進めていきます。手順を教わったことで、今後は自分たちでツールの選定や比較もできる気がします。
そして、もっとも大きな影響を感じたのは、今まで知らなかったことを知ることで「こんなこともできるのでは?」というアイデアが社内で生まれてきたことです。全社を挙げて取り組みを進めるなか、これまで意見が出なかった業務改善についても、身の回りのことから少しずつ目を向ける社員が増えてきました。
例えば、請求書の封緘作業が面倒だという意見が出ました。そこから、「今後はメールで請求書を送付できないか」「さらにそのまま仕訳して帳簿に記載できないか」といった検討にまで発展しています。小さな気付きが業務改善につながった好例でしたね。
社員同士で普段から感じていたもやもやも意見として出るようになり、外国人の従業員が多いことからコミュニケーションを見直してみようとか、文章のマニュアルだけではなく動画マニュアルも作成した方が良いのではないかといった、人的な問題の解消にも繋がっています。
潜在・顕在に関わらず、課題は自らの周りにあって、課題をそのままにしておけば実際に困るのは私たち自身です。ですので、アクセラレータ事業者のような外部からの刺激によって新しい気付きが皆の中に生まれていると感じています。

ーー順調にDXを進められていますが、今後の展望は?

まずは、今回ご支援いただいた内容を社内で継続してPDCAを回していくことを重視したいですね。小さなことから変えていこうという今の空気を大切に、社員全員で取り組んでいきます。ゆくゆくは経済産業省が主導するDX認定事業者になりたいですね。


(企業概要) 
企業名 :株式会社ヨシムラ
住所  :佐賀県唐津市海岸通 7182 番地 274
事業内容:水産加工品製造販売、冷凍加工品中卸・小売、食品輸出入

R5年度アクセラレータ事業受託会社:ロボフィス株式会社

事例紹介(PDF)を見る

事例紹介一覧へ戻る