事例紹介

社内に蓄積されたデータを分析・活用し、データ主導の意思決定が当たり前の組織風土へ

提供:玄海漬株式会社

RYO-FU BASEでは、県内企業に対するDXの取り組みの一環として、DXアクセラレータとして伴走することで、経営課題の整理やその解決への取組の企画立案を支援しており、最終的には、企業自らが自走して DX を進めることができるようになることを目指しています。 今回は、玄海漬株式会社の取り組みについてご紹介します。

明治中期の創業から約130年にわたり、酒粕を活用した粕漬製造を続けてきた玄海漬株式会社は、伝統の製法を守りながらも、時代の変化に対応するためDXへの取り組みを進めています。
今回の取り組みでは、日報のデータ活用や販売データの可視化、ホームページの導線設計見直しなど、できるだけコストを抑えながら実行可能なDXを目指しました。

 伝統産業を支える小規模組織だからこそ必要だったDXの視点 

玄海漬株式会社は、酒粕を使用した粕漬製造を主力事業とする食品製造企業として、長年にわたり地域に根差した事業を展開しています。明治中期創業という長い歴史を持ちながらも、時代の変化に柔軟に対応し続けることが企業存続に不可欠であるという認識を持っていました。特に近年は、食品業界においてもEC化の進展やデジタルマーケティングの普及により、顧客接点の持ち方や販売チャネルのあり方が大きく変化しています。そのような環境変化の中で、自社としても競争力を維持し続けるためには、従来のやり方に加え、デジタル技術を活用した経営基盤の強化が必要であると考えています

同社では、小規模企業でありながらも、自社の魅力や価値を直接顧客へ届けるための努力を続けています。以前からSNSやECを活用した情報発信や販路拡大に取り組んできました。また、紙で管理していた情報についても、可能な範囲で電子化を進めるなど、段階的なデジタル化にも取り組んでいました。しかし、業務全体を横断したデータ活用や、組織としてのDX推進という観点では、体系的な取り組みには至っておらずDXを単なるIT導入ではなく、業務改善や経営戦略の一部として活用していく必要性があると考えていました

また、小規模組織であるからこそ、一人ひとりの業務負担が大きくなりやすく、効率化の余地が経営全体に大きく影響する状況で、限られた人員で最大の成果を出すためには、業務の見える化と標準化が不可欠です。そのため、DXを単なる効率化ではなく、将来の事業継続性を高めるための重要な取り組みとして位置づけました

 アナログ業務の残存と属人化が生んでいた業務ロス 

同社では、紙や口頭による情報共有が多く残り、それが業務ロスや入力ミス、伝達漏れの要因となっていました。特に、仕入れに関する納期確認が口頭ベースで行われていたため、情報伝達ミスが発生する可能性があり、こうした小さなミスが積み重なることで業務全体の効率低下の要因となっていました。

また、担当者ごとに作業手順が異なることで、業務品質にばらつきが生じることも課題でした。経験や勘に依存した業務が多い状況では、ノウハウの共有が難しく、組織としての生産性向上が進みにくいため課題となっていました。

さらに、情報が個人単位で管理されているケースもあり、組織全体での情報共有が十分とは言えない状態でした。必要な情報を探すために時間を要するため、日常業務の中で小さな非効率が積み重なっていたことと、廃棄ロスの削減を今後取り組むべき課題として認識していました。こうした状況を改善するために、業務プロセスの整理と情報の一元管理が必要でした。

 低コストで実現する実践的DXとデータ活用の仕組み構築 

今回の取り組みでは「できるだけ費用をかけずに実行できるDX」をテーマとし、大規模なシステム導入ではなく、既存ツールを活用しながら業務改善を進めました。特に注力していたのが、『日報データの活用』です。従来は単なる記録として蓄積されていた日報情報を、時系列で整理し、分析可能なデータとして活用できる形へと再構築しました。

これにより、売り上げ結果の把握のみの状態から売上に至るまでのプロセスを把握までできるようになりました。このことから、どのような活動が成果につながっているかを分析できるようになり、改善活動の精度が向上しました。

また、業務管理やデータ整理にはスプレッドシートを活用し、自社業務に合わせて独自にカスタマイズして運用を行うことにしました。必要項目の追加や関数設定を行うことで、実務に即した形へ最適化していき、現場で実際に使いやすい仕組みを構築して継続的に活用できる体制を整えました。

さらに、ホームページについても顧客導線を意識した構成へ見直し、どの経路から訪問し、どの情報を経て購入に至るのかを意識した設計を行うことで、販売機会の最大化を目指しました。

 データ可視化が生んだ営業力向上と具体的成果 

DXの取り組みによって、委託販売先における販売状況をタイムリーに把握できるようになり、営業活動へ迅速に反映できる体制を整えました。これにより、機会損失の防止や提案精度の向上につながりました。また、情報の共有化によって、特定の担当者だけでなく、誰でも状況を把握できる体制が整うことで、属人化を防ぎながら、組織として意思決定できる環境が構築されました。この変化は小規模組織において、非常に大きな意味を持っていました。

さらに本取り組みは、既存ツールやホームページを活用しながら顧客導線や販売プロセスを見直し、販売機会の最大化を図る「攻めのDX」としての側面も持っていました。どのタイミングで、どの情報を、どのチャネルで届けるべきかをデータに基づいて検討することで、単なる情報発信にとどまらない戦略的な販売活動へと進化しています。顧客接点を最適化することで購買機会を広げ、売上拡大へとつなげていくことを継続しています。

具体的な成果としては、テレビ出演に合わせた商品情報発信を行った際、セット商品が40セット販売され、客単価向上につながったことです。これまでは単品購入が中心でしたが、データを基にした商品提案によって販売戦略の幅が広がりました。これはDXでのデータ活用が売上に直接貢献することを実感できる成果となりました。

 DXを日常業務に組み込み、次世代の経営基盤へ 

今回の取り組みを通じてDXに対する意識が大きく変化し、これまでの「特別な取り組み」から「日々の業務改善の延長線上にあるもの」になり、伴走支援で具体的な改善プロセスを体験できたことが同社にとって大きな学びとなりました。

今後は、DX認定取得をゴールとするのではなく、実際の業務や組織運営でDXの定着を目指し、施策の優先順位をつけて段階的に改善を進めていく方針です。

玄海漬株式会社は、伝統の製法と品質を守りながら、データ活用によって経営基盤を強化し、次の100年へとつなげていく取り組みを進めています。

これからも伝統と革新を両立させながら、地域に根差した企業として持続的な成長を目指します。


(企業概要)
企業名 :玄海漬株式会社
住 所 :〒847-0114 佐賀県唐津市佐志中通4065
従業員数:13名
事業内容:「玄海漬」の製造・販売

R7年度アクセラレータ事業受託会社:株式会社フォーバル九州・中四国カンパニー

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